無線ヘッドセットの通話音質が悪いので何とかする話

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ある日の出張でビジネスホテルからDiscordに入ったときの話。Sony WH-1000XM4の内蔵マイクで通話しようとおもったら*水の中にいる*ような感じでクッッッソ音質悪くて困ったことがあります。

 

Bluetooth製品全般で使われている通信規格であるハンズフリープロファイル(HFP)に切り替わったことで音質が悪化したことが原因です。

マイクを一旦無効化してプロファイルを切り替えれば直りますという話なんですが、いい機会なので無線の音声について勉強がてら調べました。

 

ハンズフリープロファイルis何

Bluetoothのハンズフリー プロファイル(HFP)は、Bluetooth対応のオーディオデバイスとの間で、音声通話や音声コミュニケーションを可能にするための諸悪の根源通信プロトコルです。

HFPは主に音声通話に特化しており、ヘッドセットから流れる音声の受信の他にマイク音声の送信も同時に行うため、音質が落ちます。

従来HFPのサンプリングレートは8kHzでWindows10以降で追加されたHFP1.6ではWideband Speech(別名HD Voice)という規格が追加されたため、16kHzで音声のやり取りができますが一般的な有線マイクのサンプリングレートは44.1~48kHzなので音質が良いとは言えません。

マイクは使わず音声のクリアさや高品質な音楽再生を重視する場合、Advanced Audio Distribution Profile(A2DP)という別のプロファイルもあります。こちらはステレオです。

オーディオをかじっている人は聞き覚えがある単語と思いますが、SBCやaptX、LDACなどは、A2DPプロファイルの下で動作している音声データの圧縮・伝送方式を決定するコーデックです。HFPで使われるコーデックは一般的にSBCが採用されています。

プロファイルとコーデックの関係性

プロファイルは1接続で2つ同時に使うことができず、マイク音声だけHFPを使って受信音声だけA2DPを使うというよくばりセットができません。(確かな情報ではないですがマルチポイントモードを利用して2接続すれば製品によっては同時に使えるものもあるようです。)

 

まだ未来の話ですがHFP1.9ではSuperWideBand(SWB)という仕様が追加されており、32kHzまで増やせるのではないかと言われています。コーデックにはLC3という新しいものを使います。

Windows11では以下URLを参照すると現在HFPは1.7.2が採用されています。HFPのバージョンは1.7.2の次は1.8なので、まだまだ先の話です。

OSが対応していないですし、OSがサポートしてからメーカーも新しいバージョンで製品を出し始めるので当面の間は恩恵にあずかれませんが、近い将来HFPでもマシな音質になることでしょう。補聴器などの音質を求める方々には朗報と言えます。

 

音質を求めるならば有線にしろというのはもっともな話ですが、人は有線ではなく無線に有線のクオリティを求めるのです。ケーブル邪魔だし。

 

WF-1000XM5など既に製品化されているものもありますが、同じくLC3コーデックを使ったBluetoothの新規格のLE Audioというのも出ています。

AndroidでもXperia 1 ⅣやXperia 5 Ⅳなどの比較的新しい機種と組み合わせないと使えないようですが、LC3は現在のSBCよりも圧縮効率がいいらしいので、LE Audioに対応した製品であればおそらく通話品質が向上すると思います。

まだAmazonで発売していないですが、Creative Zen Hybrid ProだとLE Audioに対応したUSBトランスミッター付きでPCでもLE Audioを試せるようです。これはレビューに期待。

 

どうしても無線でマイクを使いたいときの解決案

HFPを無効化して別のマイクを使う

脳筋的な解決手段ですが、ヘッドセット側はHFPを無効化してA2DPを使い、PC内蔵のマイクを使えばHFPを使うよりはマシな音声で使えます。

 

サウンドの詳細設定からマイクを無効化するだけですが、Win11での手順を一応書いておきます。

右下のスピーカーアイコン右クリしてサウンドの設定

下にスクロールしてサウンドの詳細設定

録音タブのヘッドセットを右クリックして無効化

 

これでWH-1000XM4の内蔵マイクが使えなくなるのでA2DPが使われるようになり、音質が改善されます。

 

音質をソフトウェア側で何とかする

BluetoothマイクがHFPで通信して音質が悪くなるのは許容して、AIで音声を補正して再生するようなソフトを使います。

多少遅延しますがRVCで自分の声を学習させてVC Clientでリアルタイム音声変換させれば、使用する機材の音質が悪くてもソフトウェア側で補正してくれます。

今はそんなに選択肢がありませんが、今後はAIを使って悪い音質を補正していくソフトウェア製品が増えていくのではないかと思っています。

 

独自規格の無線デバイスを使う

PC内蔵マイクではなく、トランスミッターとレシーバーが別れていてBluetoothで通信しない無線マイクを個別に用意する案です。Bluetooth接続のマイクはどれもこれもHFPを使って通信するので音質的に妥協が必要です。(Bluetoothで使う猿ぐつわmutalkとかを買って音質に悲しむフレンドを何人か見たことがある)

例えば以下のような製品だったら無線で高音質なマイクを使えると思います。どうしてもBluetooth以外で通信しようとすると無線通信は独自規格になるので財布には優しくありません。でもちゃんとしたメーカーにしてはこの製品は安いと思う。(DJIはドローンで有名な中国のメーカーです)

 

いっそのこと法人や企業が会議室のAVシステムに採用するようなプロ向けの機材を使ってIPネットワークオーディオシステムを組んでしまうのもありです。IPネットワークオーディオに使われる規格としてはEtherSound、Danteなどがあります。マイクとレシーバーにIPアドレスが振られてネットワーク経由での通信を行うのでアナログ機材と比べても音質の劣化が少ないです。

ただしギガビットEthernet前提で無線受信するのにPoE給電に対応したハブやレシーバーやらがいるので構築にウン百万円かかって値段が高いどころの話ではないですが…

 

(余談)マルチポイントモードで2台とも同じデバイスに繋ぐ

本当にできるか分からないので余談です。

Bluetoothのオーディオ製品にはマルチポイントモードと呼ばれる複数のデバイスを同時に接続できる機能を持つものがあります。

1接続ではマイク音声だけHFPを使って受信音声だけA2DPを使うことができないですが、BluetoothトランスミッターをPCに繋いで、PC自体のBluetoothと2台同時接続してしまえばA2DPとHFPを両方同時に使える製品もあるようです。

以下記事によるとShokzのOpenCommはいけるんだとか。

BluetoothトランスミッターとしてBTA30、機種が違いますがAfterShokzのAeropexを持っているので検証してみましたが同じPCに繋がったBTA30とPCのBluetoothをマルチポイント接続をして音楽再生中にPCのDiscordの入力にAeropexを設定してみたところ、マイク入力したタイミングで音声が止まったのでAeropexでは無理でした。

WH-1000XM4もマルチポイント接続に対応しているので、試してみたのですが同じく無理でした。

OpenCommの仕様でそうなっているのかもしれません。謎です。

 

結論

安くて品質のいいマイクを使えるようになるのはまだ先なので、どうしても無線ヘッドホンで通話したかったら待つか、妥協して有線マイク買ったほうがいいんじゃないかな!

私の知ってるオーディオオタクフレンズはこのマイクをおすすめしてました。

 

以上

圧倒的成長。